
妻の“あの姿”が、すべてのはじまりだった。
妊娠前から、健康には常に気を配っていた妻。料理も大好き。
それでも産後は、赤ちゃんをおんぶしながら納豆ごはんと即席みそ汁、冷凍食品を急いでかきこむ毎日。
自分のことは、いつも最後。それが、産後の“当たり前”だった。

気がつけば、家には寝に帰るだけになっていた。
あれは、2019年9月。出産の3ヶ月前のこと。
会社の社長が癌で急逝し、僕がいきなり会社の舵取りをすることに。
平社員だった僕が、突然トップに立ち、引き継ぎもほぼゼロ。毎日が決断と混乱の連続だった。
深夜2時や3時に帰宅し、朝8時には家を出る。
「ただ寝に帰るだけ」になった家で、妻と会話を交わす時間すらなかった。
そんな中、妻は里帰りせずに出産。そして、初めての育児が始まった。

そうこうするうちに、コロナ禍が訪れた。
会社は存続の危機に。売上は激減し、僕はさらに会社に縛られた。
妻は、帰省もできず、助けてくれる身内もおらず、子育て支援センターも休館。
誰の手も借りられない完全ワンオペ。外にも出られず、誰にも会えず、四六時中赤ちゃんと二人きり。
食事の時間も、寝る時間も、自分の時間も、一切なかった。
妻は、寝かしつけながらも、眠っていなかった。
赤ちゃんの夜泣きに付き合い、抱っこして、あやして、授乳して。
それを何時間も、何日も、繰り返していた。
ストレスはたまっていく一方だった。ずっと張り詰めたまま、ただ必死に生きていた。

「何か、してあげたい。」
でも、何を買っても、何を言っても、うわべだけな気がしていた。
そんなときにハッと気がついた。サプリ愛好家の僕は、ずっとサプリやプロテインを飲んできたことを。
プロテインなら、作るのも簡単で1分で飲める。ごはんが十分に作れなくても、食べられなくても、“飲むだけで、体に必要な栄養”が摂れる。
「これが、今の妻に必要かもしれない」そう思った。